ブエノスアイレス

1997年、ウォンカーウァイ監督のレスリーチャン・トニーレオン主演映画。

密度濃いです。小さな空間の、最低限の関係性を見せる映画です。

怒り全開、始終怒り顔で振り回される三島由紀夫カットのトニーレオン。
レスリーチャン。もうレスリーチャンによるレスリーチャンにしかできないレスリーチャン。全開です。

ウオンカーウアイの映画を面白いと思う自分を、わりと恥ずかしいと思うのですが、どうしても共感できてしまうので仕方がない。
あのサングラスにジャージの風貌で、愛情持って撮っているのだなあ。不器用なんだなあ。社会と上手く適用できないんだなあ、でもしたいんだろうなあ。と思ったりして。

それにしても、まあまあまあよく集めました。おもしろエピソード、てんこ盛りです。格好良い風の映像に騙されちゃいけません。おばかさん連発。レスリーチャンもトニーレオンも良い顔しております。

お前のせいで車こわれただろ。滝に行けねーよ。俺行かねーよ。とか、
時計あげたけど、そのせいで殴られたんだよばーか。そのせいで、手うごかないんだよ。手。とか、
散歩いったけど寒いからやめよ。とか、
風邪ひいて寝てるけど、腹へったから飯作ってくれよ。とか。

こんなんばっかり。小さなどうしようもないエピソードの羅列が続きます。行き当たりばったりだけど、所詮毎日の生活は行き当たりばったりですから、無理の無い、他愛のない物語がすこしづつ見ている心に積み重なります。

なまくら坊主のチャンチェンが目をつぶって登場し、小さな空間の小さな世界から、世界のはてだの、巨大な滝だの、台湾だの。体が軽くなったように、時計がくるくるまわるように、全ての物事が動き出します。

でも、見ていると、
結局動き出したけど、苦いけど辛いけど楽しかったなあ。あれに戻るの嫌だけど、戻りたいなあ。でも駄目だろうなあ。
そんな気持ちになります。



ウオンカーウアイ。いいけどさ、いいけどさ。最初に滝を見せてタイトルバックにして、最後にもう一度滝を持ってくるのは、電車の風景からはじまり、電車の風景で終わる「欲望の翼」と全くおなじ手法じゃんか、と思ってしまいます。
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